しかし菫花のその思いは届かなかった。 紫門さんが窓辺に現れなくなった。 心臓が嫌な音を立てる。 「紫門さん……」 独りごちて、瞳を伏せる。 悲しいのに涙が出てこない。自分は何て冷たい女なのだろうと思う。私からまた感情が消えた。泣くことさえも忘れてしまった私を、人間に戻してくれるのは紫門さんだけなのだ。 あなたがいなければ……私は人間には戻れない。 今日も紫門さんが現れなくなった窓に視線を向けるが、紫門さんは立っていなかった。