幼馴染の渚はサッカー強豪校を受験するらしい。

それを知ったのは先週だった。

いきなり告げられた一言。

「俺、受験するから」

これからも同じ学校で、幼馴染としてそばいられるんだと思ってた。

すごい悲しくて苦しかったけど、渚が決めたことだから否定するつもりは無かった。

離れる運命ならば全力で応援しようと思った。

だから受験の日、私は彼にお守りを渡した。

中に小さな手紙を入れたお守り。

「受験が終わったら中身開けて見て欲しい。返事は…いつでもいいから!!」

そう言って押し付けるように私は渡した。

そして渚の受験が終わって1週間。

学校で渚に会うことはあっても、話すことは無かった。

手紙の中身、見たのかな?

もし見たのだったら……。

そう思うと胸がドキドキと高鳴った。

その日の放課後、渚に呼び止められた。

「なぁ、紗奈」

「へっ!?渚っ」

「うるさい」

「ご、ごめんっ」

もしかして手紙の返事……?

そう思った時、渚が顔を赤くしながらこう言った。

「あの、さ……手紙ありがとう」

その言葉に私は何も言えなくなった。

そして顔に熱が集まり、真っ赤に染まった私。

思いっきり顔を背けてしまった私は、気まづくて目を瞑った。

「み、見たっ!?ご、ごめ……」

「俺も紗奈が好きだよ」

「え……?」

私がパニックになって慌てていた時、渚はそっと呟いた。

今、なんて……?

紗奈が、好き……って言った?

そんなわけ、渚が好きなわけ……。

「受験、合格したら紗奈と離れるけど……俺はずっと紗奈を好きでいる。紗奈の気持ちを聞かせて」

その言葉を聞いた瞬間……目から涙が溢れた。

「う、そ……。渚が私を……っ?」

「うん。紗奈が好きだ」

「……っ」

ボロボロと溢れる涙を、渚は人差し指でそっと拭ってくれた。

渚に気持ちを言わなきゃ。

「私も……大好きだよ。渚が好きっ……!」

勢いで渚に抱きついた。

そんな私を優しく抱きとめてくれた渚に、私は胸が熱くなった。

渚が大好きだ……、渚の1番そばで笑っていたい。

「ねぇ、渚……」

「なに」

「これからも一緒に居たい。ダメかな……?」

学校が離れちゃっても、渚の1番がいい。

こんなわがままじゃダメかな?

渚の服に少し頭を擦り寄せると……。

渚は私の頭を優しく撫でて言った。

「紗奈、何可愛いこと言ってんの。当たり前に決まってるでしょ」

もう渚の言葉に耐えられない。

顔が熱くて死んじゃう……!

でも、この渚の温かさが愛しくて落ち着く。

これからも渚のそばにいたい。

そうだ、明日神社に行ってお参りしに行こう。

『これからも渚と一緒にいられますように』

渚の温かい胸の中で私は強くそう思った。

この幸せな渚との時間は誰にも譲らないんだから。