三途の駅のおくりもの




 トラ猫。駅の外を、しっぽをぴんと立てて歩いている。何も知らずに、散歩かよ。おまえ、舞依にかわいがってもらってたんだろ。舞依は、トラ猫の住みかである倉庫に毛布なんかを用意してやってた。これからは俺が代わりに、なんて考えたくもない想像をしたときに、妙案が浮かぶ。


 ――すべては、受け入れてしまった方が楽。それでも、受け入れたくないこともある。苦労してでも、はねのけた方がいいこともある。俺の思いついた、たったひとつの悪あがき。うまくいくかはわからない。それでも、まだ自分にできることがあるのなら。舞依のためなら、やってやる。





 俺は細工を終え、駅に戻る。空は澄んで晴れ渡り、あちこちに積もる雪は宝石のようにきらめいている。

 舞依が来た。声をかけても反応しない。魂は、魂であって本人じゃない。悪あがきが失敗したら、これが最後の別れになってしまう。どこからともなく電車が現れるのを見届けて、俺は駅を飛び出して走る。ちゃんと見送れなくてごめん。でも、行かせるつもりもないんだ。

 心臓が高鳴る。チャンスはたった一度だけ。電車が近づく音が聞こえる。今だ――俺はマッチを擦り、それを打上筒に放って、思わず祈る。神なんて信じてないくせに、こんなときばかりは頼ってしまう。

 打上筒から飛び出した花火は雪山に向かって炸裂し、その衝撃は雪の中へ広く伝わっていく。積もった雪が、呆気なく崩壊する。


 ――雪崩が起き、電車をのみこんだ。


 車体は倒れ、雪の中で停止する。……成功だ。成功した。成功したんだ!
 しかしそれを噛みしめる間もなく、視界が白一色に覆われる。こうなることは、大体予想がついていた。

 俺は電車と共に、雪崩に巻き込まれていった。