『智紀へ』
そう書かれた封筒。中には一枚の便箋がある。
『手紙、気づいちゃったかな? 読んでほしいような、読んでほしくないような、そんな気持ちで書きました。
智紀のことだから、券売機をいじくり回して、何かを知っちゃってるかもしれないね。そうだとしても、気にしないで。私は後悔なんかしてないよ!
智紀、今までありがとう。
実は私、学校に行ってなかったの。電車の話しちゃって、でも友達はみんな電車が見えなくて。ちょっと不気味がられたりして。少し、しんどくなっちゃったんだ。
私、今どきスマホも持ってないし、友達とも全然会わなくなって、正直さびしかったんだよね。だから、智紀が私の話を聞いてくれて、いつも一緒にいてくれて、本当にうれしかったんだ。
だから、ありがとう。
舞依より』
シャーペンで書かれた手紙は、最後の行になにかを消した跡がある。消された言葉を、直接聞きたかった。同じ言葉を、俺だって伝えたかったんだ。俺は伝えなきゃいけなかったんだ。
自分が情けなくて、どうしようもなくて、無力さにうちひしがれて、その場にしゃがみこんだとき。にゃあ、と小さな鳴き声がした。



