三途の駅のおくりもの




 まい、思わずその名前を呟いた。その名前の響きの持ち主は、あまりにわざとらしい笑みを浮かべて、俺から切符を奪い取った。


「……早死にだねー、私」

「……この名前……おまえ、なのか?」

「そ。……あのさ、お願いがあるんだけど」


 舞依はあっけらかんとして、いつもとさほど変わらない口ぶりだ。舞依より俺の方が、この状況を受け入れきれていない。でも、俺は気づいている。舞依の手が小さく震えていることを。


「智紀、私のこと、見送ってね」


 人が死ぬのは当然だ。老若男女、いつ死んだっておかしくない。そう思っていた。けれど、目の前の、俺と同じくらいの歳の、俺が会いたいと願った人が、明日死ぬ。そんな事実をすぐにのみこんで見送れるほど、俺は冷酷じゃなかったようだ。

 けれど、仕方ないじゃないか。切符が発行されてしまえば、もう遅い。切符を隠しても、来た人の行く手を阻んでも、結局電車に乗るのは止められない。それは舞依が散々試して証明が済んだことだった。だから、俺は、舞依の願いを断る理由が見つけられない。


「――わかったよ……」


 情けない返事だったが、舞依を安心させるには充分だったようだ。ありがとう、そんな舞依の一言は心の底から湧き上がったような響きだった。