秘密のはなしかな、聞かない方がいい? 

 するする会話がこっちに流れてきた。耳をふさごうか迷ったけれど、気になっちゃってじっくり会話に集中した。

「歩夢のこと、恋愛対象として好きなの?」

 怜くんが悠生くんに質問している。しかも僕のこと。

「好きです」

 すぐに悠生くんが答えた。

「はぁー」と怜くんがため息ついた。
 なんでため息ついたんだろう。怜くんが困ることひとつもないのに。

「園田先輩も、歩夢くんのこと好きですよね?」
「あぁ、好きだけど」

 今、好きって言ってくれたよね?

 嫌いじゃなかったんだ……。最近僕は怜くんに嫌われているのかな?って思っていたから、ほっとした。

「それは、恋愛相手としてですよね?」
「……」

 えっ? 悠生くん、なんてこと聞いちゃうの? 怜くんがそんなふうに僕のこと見ているわけないじゃん。何も言えなくなって困ってるよ。

 でもそれの答え、僕も気になるかも……。

「歩夢のことは……そういうのじゃなくて、弟みたいな存在だって思ってた……」

 そういうのじゃない――。

 怜くんと僕の好きは、違う。だって〝恋の好き〟を感じているのは僕だけなんだもん。知ってたけど、1ミクロンぐらい同じ気持ちだったらな。なんて考えていたのかもしれない。胸の辺りがずきんとした。

 直接、怜くんの声で違うって聞いた。怜くんとそんな話をしたことがなかったから、初めて聞いた。

 弟みたいでも嬉しいよ。
 でもなぜか涙がいっぱい出てきちゃったよ。

 悠生くんは、今お試しで僕たちが付き合っていることも怜くんに話してた。それは2年生になるまでの期間限定な話で、それから本格的に付き合うか、やっぱり付き合わないかを決めることも。それからふたりの声は小さくなって、こそこそしだした。僕も泣いてちょっと鼻水ずるずるしてたから会話が聞こえなかった。

 話が終わったみたいで、とびらが開いたから慌てて寝てるふりをした。