「ゆうま!」
「あれ、ヒナちゃんしりあい?」
こくこくと頷くことしかできない私。やっぱり、見間違いじゃなかったんだ・・・
お店の黒い制服に包まれた彼は、普段のラフな服装とは違う。さっきまでは似た人がいるなぁ、なんてのんきに思い浮かべていたのに今は別人みたいに大人っぽく見える。
「すいません。こいつ酔っ払うとタチ悪いんで、お客様にメーワクかける前に俺が外に出してきますね!」
背中をぐいぐいされてお店の外に押し出されてしまう。あっけにとられたような石井さんの表情がちらりと見えた。
「ちょ…っと!」
「追いかけられねーうちに逃げんぞ」
抗議しようと顔を向けると、口だけ動かしながら早口でそんなことを言われ、ますます混乱してしまう。頭も、ふわふわどころか、くらくらとして、視界がくらりと歪む。
「まってまって・・・ そんなに早く歩けないよ」
よろけそうになるのを踏ん張って立っているので精いっぱいだ。
ちっ。
かすかな舌打ちが聞こえた。
「ほら、」
悠真はしゃがんで背中を私に差し出す。これは、小さいころたまにやってくれたおんぶの合図。
「早く乗れ」
「えっ、うそ、無理だって…」
「うるせー、早くしろよ!」
剣幕に押されて仕方なく悠真の肩に両手をかける。ぐいっと膝裏に腕が回され、視界が一段高くなった。
と、悠馬はありったけの速さで走り出した。



