チュンチュン、と小鳥の微かな囀りが私の鼓膜を震わす。目覚めたばっかのおぼつかない力で目を開くと全く記憶にない部屋が私の瞳に映る。ゆっくりと体を横に動かすと、隣には眠っている名前すら分からない金髪男がいる。私は下着を着ていないことに気づいて、昨日何があったのかをなんとなく察し、床に投げ捨てられている下着や衣服を見つめる。

---果たして、この男は避妊はちゃんとしたのだろうか。まぁ、でも今日は安全日だからそんなに焦らなくてもいいか。

私はのっそりと男を起こさないように体を起こし、捨てられている衣類たちをかき集め、なるべく音を出さないように自宅に帰る用意をする。枕元にあるスマホを取る時、金髪男の顔を覗いてみる。言い方は悪いけどどこにでもいるような、ぱっとしない顔をしていて、むしろ昨日の記憶がない方が良かったのかもしれないと思う。スマホの電源を入れ、まぶしい光が私の瞳を突き刺す。自宅まで約20分。そう遠くなく、とりあえず私は小さな声で「ありがとう」と寝息を立てている金髪男に言い、この家を出た。

時刻は昼の11時で、あまり慣れてない帰路に少し足を詰まらせていた。

--ピロンッ♪

スマホを開くと璃那からメッセージが届いていた。

『璃那:うち今新宿駅いるんだけど麗央帰っちゃった?』

少しずつ昨日の記憶が蘇ってきて、昨日璃那といつものクラブに行って金髪男と出会ってそのまま帰ったんだ。そして、確か璃那は金髪男の友達とどっか行ってた気がする。

『麗央:いま家出たから30分くらいで新宿着くよー』
『璃那:そっちはどんな感じ?早く麗央にあゆむ君のこと話したい♡』

どうやら璃那は昨日の男といい感じであることがくみ取れて、今にでも私に言いたそうな感じがする。璃那はもともと恋愛体質だからすぐに恋に落ちるけど、逆にそれが羨ましかったりするのが事実。