胸の中がズキズキと痛み、モヤモヤとした気持ちになっていく。初めての水族館を楽しみたいのだが、魚よりも隣にいる清貴と姫乃が気になって仕方ない。そんな時、椿は仁に声をかけられた。

「せっかくだから椿ちゃんって呼んでもいいかな?」

「は、はい。大丈夫です」

「あっ、ずるい!私たちも「椿ちゃん」って呼びたい!」

蘭と菜月が会話に割り込み、仁に得意げに笑う。仁は悔しそうにしていたものの、すぐに椿に話しかけた。

「椿ちゃんはどこか行きたいコーナーはある?」

仁が見せてくれたパンフレットには、熱帯魚コーナーや怪獣コーナーなど水族館のどこにどんな場所があるかが細かく記載されている。椿はそれを見るものの、困ってしまった。水族館に来たことがないため、どれも魅力的に見えてしまう。

「すみません。実は、水族館に来るのが初めてで……」

「そうなの?なら、今日は思いっきり楽しまなきゃね!」

椿が謝りながらそう言うと、菜月は一瞬驚いた顔を見せたものの、すぐに笑顔を浮かべる。蘭も「次は熱帯魚コーナー行ってみようか?」と提案してくれた。そんな中、「それってマジなの?」と小馬鹿にしたような声が響く。姫乃の声だった。