蜜月溺愛心中

「初めまして。灰原椿と申します。清貴さんと結婚させていただきました。以後お見知り置きください」

緊張で声を震わせながら頭を下げ、自己紹介をする。清貴の祖母はその様子を見て慌てたように「顔を上げてちょうだい」と言う。椿が恐る恐る顔を上げると、清貴の祖母は優しい笑みを向けてくれた。

「初めまして。清貴の祖母の百合枝（ゆりえ）です。こんなに可愛らしいお嬢さんを清貴が連れて来てくれるなんて思ってもみなかったから、驚いてしまったわ」

「可愛らしいだなんて、そんな……！」

椿はワンピースのスカート部分を握り締める。結婚したばかりの頃から別人のようになれたのは、清貴が化粧品などのお金を払ってくれたためである。椿はただ首を横に振った。

「清貴。素敵なお嬢さんに来ていただいたのだから、きちんと椿さんを幸せにしないといけませんよ。椿さんを泣かせたら許しませんからね」

「わかっています、おばあ様。椿を僕は一生を懸けて幸せにします」

百合枝の言葉に清貴は大きく頷き、椿の肩を抱き寄せる。椿が見上げた彼の横顔はとても幸せそうに見えた。