椿は立ち上がり、ドアを強く叩く。拳は痛みを訴えるものの、それを無視して叩き続けた。そして何度も叫ぶ。

「助けてください!!ここにいます!!誰か!!」

何度叫んだだろうか。喉が叫び過ぎから痛み始める。しかし、この騒ぎは自分にとって希望の光だと椿は思い、助けを求め続けた。清貴の元に帰りたい、ただその一心で。

「助けて!!誰か!!」

「椿!!」

ドアを叩く椿の体がピタリと止まる。ドアの向こうから聞こえてきたのは、清貴の声だった。

「……清貴さん?」

恐る恐る訊ねた椿に、「ああ。そうだ。助けに来たぞ」と扉の向こうから清貴は言う。椿の瞳に涙が浮かんだ。胸が苦しいほど高鳴っていく。

カチャリ、と音がしてドアがゆっくりと開いていく。その先にいた清貴は汗を垂らしながら、椿に微笑みかけている。

「椿、迎えに来た。一緒に帰ろう」

「……清貴さん!」

椿は清貴に泣きながら抱き着いた。清貴が「汗をかいているから」と言ったものの、構わずに抱き締める。清貴の心音が、ただ愛おしかった。