蜜月溺愛心中

体に強い衝撃が走る。ジン、と強い痛みに椿は何が起きたのか理解できなかった。開いた口に空気が入り込む。しかし、その空気が肺の中に到達した瞬間に椿は激しく咳き込んだ。空気が埃っぽく、どこかカビ臭い。

目に涙を浮かべながら咳き込む椿の体に、また衝撃と痛みが走る。何者かに蹴られたのだと椿は理解した。顔を上げた先にあった景色に、椿の心は一瞬にして絶望に染まっていく。

「いつまで寝てんのよ!このクズが!」

そう言い、椿の髪を掴んで引っ張ったのは梓だった。その後ろには智也と由起子がいる。椿の手が小刻みに震え、顔が青ざめていく。幸せな夢から覚めた先は、悪夢のような現実だった。

「な、何で……」

椿は呼吸が荒くなっていくのを感じながら梓たちを見た。時間が経つごとに、霧がかかったかのようだった椿の頭の中に、職場から家へと帰る時のことが思い出されていく。フードを被った人物に無理やり車の中に連れ込まれたのち、気絶させられたのだった。