【堕天】のトラウマとも言える豹牙さんと"全く"同じ振る舞いをする幹部がいるのだ。
怖くて怖くて動けないだろう。
だからあとは時間を─────。
「あれ?来るの遅かった?なんか面白いことになってんね」
心に余裕が生まれた瞬間、この場に似つかわしくない軽快な声が響いた。
たったそれだけだというのに全身が粟立ち、場の空気を持っていかれた。
いやそれは錯覚だ。主導権は依然として私が握っている。
それなのに追い詰められた気がするのは、初戦の記憶が蘇るからだ。
声の主が私を見て不敵に笑う。
「久しぶりだね、一条冴妃」
暴走族【堕天】"元"総長、城ヶ崎悟。
本来ならここにいないはずの人物が、そこにはいた。
「フルネームで呼ぶな」
平然を保ちつつ語気を強めると、城ヶ崎悟の傍らにいる2人が身を縮こまらせた。
「ひぃっ」
「さ、冴妃さん・・・」
齋藤香菜子と、環あやな。
あぁまた面倒事なことになりそうだとため息をつきたくなった。



