ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

「辛かったでしょ?」
「……」

 返事はない。でも、ゾンビとはいえ仲間は仲間だ。きっとつらかったに違いない。

「私を守ってくれてありがとう」
「……果林を守るのは、当然だから」

 家に到着し、バイクから降りる。バイクは勇人がいつものように指定位置に動かしてくれる。玄関の扉を開け靴棚の上にヘルメットを置いた。

「はあ……」

 どっと疲れが出た。結局おにぎりを食べなかったのでこれは後でお昼として食べよう。テレビのサブチャンネルをつけると水族館の水槽を泳ぐエンペラーペンギンの映像が流れ出す。羽をひれのようにして動かしながら泳ぐエンペラーペンギン。まるで水の中を飛んでいるように見える。

「疲れた?」

 いきなり勇人にそう問われた私。嘘も付けないので首を縦に振ると、勇人が近づき後ろから抱きしめた。

「おつかれ」
「……ありがとう。多賀野くんこそ疲れてない?」
「全然」
(やっぱりゾンビは人間と違うんだな)
「そっか」

 彼が疲れていないならそれでいい。私は勇人に抱かれたまま、水槽の中を泳ぎ回るエンペラーペンギンを見つめていたのだった。