ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

 目の部分は充血しているのを通り越して赤い光を放っているようにも見える。グレー色の体色からして水族館によくいるバンドウイルカと思われるがゾンビ化したものがここに来るとは……とにかくこれは危ない。

「多賀野くん!」

 だが勇人は襲い掛かるゾンビイルカに蹴りやパンチを入れる。そしてゾンビイルカの攻撃をひょいひょいとボクサーのようにして避けている。
 まるで勇人の動きはゾンビには見えない。人間でもあそこまで俊敏な動きを見せるだろうか?

「ふっ!」

 勇人の右足がゾンビイルカの腹部に直撃した。ゾンビイルカは勇人を襲うのをあきらめたのか、身をよじるようにして海に入り引き返していったのだった。

(帰っていった……)

 私は勇人に駆け寄って近づく。あれだけゾンビイルカと格闘していても息切れやスタミナ切れのような様子は見えない。

「多賀野くん……!」
「果林、もう、大丈夫」
「みたいだね……」

 黒い背びれは水平線に向かって泳ぎ、次第に見えなくなった。海の中に潜っていったのだろう。

「多賀野くん、ここは危ない。家に戻ろう」
「ああ……」

 勇人は停めてあるバイクの方に向かって歩き出す。私も彼と共にバイクへ向かった。座席に座り、彼の胴体に手を回す。