ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

「ん?」

 波に乗って何かがこちらへと流れ着くようにして泳いでくる。

「魚?」

 こちらに近寄って来る魚は1匹。見た感じサバだろうか。なんでまたこんな所にサバがいるのか。

(弱ってる?)

 よろよろふらふらとした泳ぎ方は正常な魚のそれではないのが一目で見てわかる。しかも時折波に流されている。自力で泳げる力はあまり無いようだ。

(弱ってるからこの砂浜まで漂流されてきたんだろうか)

 じっと弱ったサバを見ていた時だった。サバがいきなり私の方へ口を大きく広げ、ジャンプしてきた。

「うわっ?!」

 とびかかって来たサバを何とか身体をひねるようにして避ける。砂浜に着陸してびちびちと跳ねているサバの口にはピラニアのような牙が生えていた。目つきも何だか凶暴と言うか生きているサバという感じじゃないような。

「これ……もしかして魚のゾンビ?!」

 すると勇人がばっとそのサバの胴体を押さえつけるようにして右手で手づかみする。そして大海原へ向けて大きく振りかぶって放り投げた。放り投げた後は数秒くらい間を置いてばしゃんという音がうっすらと聞こえてきたのだった。その音が聞こえたのを見計らったように勇人はこちらを向く。

「……果林、大丈夫か?」
「だ、だいじょうぶ……ありがとう」
「あれ、オレとおんなじだ……」
(多賀野くんと同じゾンビだって事よね……?)