ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

「何か……聞こえたか?」
「……ううん、何も聞こえなかった。波の音の多賀野くんの音だけ」
「……そうか」

 結局海の音が何なのかは、よく分からなかった。まあ、良い。いつかまた聞こえるかもしれないし聞こえないままかもしれない。
 それにしても海の向こう側は水平線が広がるだけだ。船が通ったりはしていない。
 私と勇人だけがこうして海と戯れている。

「お腹減ったかも」

 空腹を感じたので、バッグの中に押し込めていた食パンを袋から取り出してかぶりつく。
 ふわふわとした食感に噛めば噛むほど溢れ出す甘味。オーブンを使ってトーストにする時とはまた違った風味だ。

「うん、美味しい」

 卵やハムなどがあればこれでサンドイッチにしてもありかもしれない。

「何を給べているんだ……?」

 勇人からそう聞かれたので私は食パンを食べていると伝える。

「……いる?」
「いらない。……果林の血が欲しい」
(多賀野くんもお腹減ったかな?)
「食パン食べながらでも良い?」
「いや、食べるまで……待つ」