ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

「ふぅん……」

 貝殻の中の空洞を覗き込んだりしてしばらく眺めた後、勇人は貝殻を私に返した。

「どうだった?」
「まあ、綺麗……だと、思う」

 無表情だが、声は少しだけ柔らかく感じたのは私の気のせいだろうか?

「あ、でかいのある!」

 波の中で転がるサザエみたいな大きめの貝殻を見つける。

「よいしょ……」

 左手を伸ばして貝を取る。その時、私は幼い時のある記憶を思い出した。

「こうすると、海の音が聞こえるんだって」

 幼稚園の行事で海に来た時の事だったか。同じクラスの女子が拾った貝殻を電話の受話器のようにして、耳を寄せていた。
 どうやら、貝殻の中から海の音が聞こえるらしい。

「本当?」

 私は試しにやってみたが、なんにも聞こえなかった。だから海の音がどんな音なのかは分からない。

「やってみよ」

 あの時と同じように、拾った貝殻を電話の受話器のようにして耳を寄せてみる。

「何してるんだ?」

 勇人の声だ。私はこうすると、海の音が聞こえるかもという話をすると、無言のまま私の顔に近づき、視線を向ける。

「……」
(聞こえない……ただ、波の音しか聞こえてこない)

 しばらく耳を澄ませてみたものの、貝殻の奥からは何も聞こえては来ず、くぐもった波の音しか聞こえてこなかった。