ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

「綺麗だなあ……」

 この海水浴場に来るのはいつぶりだろうか。幼い頃に何度か来たような記憶はある。

「多賀野くんはここ来た事ある?」

 彼にそう質問すると、首を大きく縦に振った。そう言えばこの海水浴場は暴走族や不良のたまり場であるという話は学校でもよく聞いていたような。

「皆さん、海水浴場には行かないようにね。暴走族や不良のたまり場になっているので行くなら自己責任だから」

 風紀担当の先生もそう言っていた。

「多賀野また海水浴場にいたらしいよ」
「あの海水浴場行きたいのに……暴走族のせいで怖くて行けないよ」

 クラスでもこんな話があったっけ。勇人は特に怖がられていたし、私も怖かった。
 私は勇人と共にロープを跨ぎ、無人の海水浴場へ足を踏み入れる。

「ほんとに誰もいない」

 海水浴シーズンになると海の家ならぬ屋台が並びお祭りのような雰囲気になるのだが、人が誰もいない以上それも全くない。
 ただ、私と勇人の2人だけを静かに迎え入れている。

(静かだ)

 寄せては返す波の音と、私達が砂浜を踏みしめる音だけが聞こえる世界だ。
 この静かな世界にいると、心が落ち着く。