ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

 何事もないようにバイクに跨り運転する勇人。目に光は無く無表情のままだが、バイクに乗る姿は人間のそれだ。

「ん」
(後ろに乗れって事か?)

 彼の後ろに乗る前に近くに転がっていた黒いヘルメットを彼に差し出すと首を横に振られたので私が被る事にした。
 ヘルメットを被り終えると彼の後ろにゆっくり座り、胴体に手を回す。

「行く……」

 バイクはギュンギュンとエンジンを勢いよく鳴らしながら海へ向けて走り出した。

(多賀野くん。普段から乗りこなしてる感じがする……)

 勇人の様子に変化は無く、バイクも難なく乗りこなしている。ゾンビがバイクに乗るなんて未だに信じられないがやはり何が起きてもおかしくはないのだろう。
 バイクは住宅街の道をひた走る。私が時折指をさして海まで誘導していく。

「そこ、左に曲がって」

 返事は無いが動きにはピタッと素早く反応してくれる。住宅街を出て大きな道に出ると、そこにはよろよろと歩くゾンビがちらほら見える。
 だが、このバイクの速さなら彼らはまず手を出せないだろう。と思いたいが油断は出来ない。
 バイクはゾンビがいる方角に向かいひた走る。

「ぐおおおお!」

 ゾンビが手を伸ばして襲いかかるが、流石にバイクの速さには追いつけないようだ。