玄関に向かい、ドアノブをガチャガチャと動かす勇人に私はちょっと待って。と彼を止める。

「ほんとに海行くの?」
「……うん」
「じゃ、じゃあ準備するから待ってて! ご飯とか貴重品とか色々!」

 彼を一旦リビングに連れてそこで父親の私服に着替えてもらいながら私も外出用の服に着替えつつ準備をする。

(お昼どうしよ)

 食パンがあるからそれを袋ごと持っていこうか。それとお菓子でも持っていこう。
 バッグに食パンを袋ごと押し込み、その他諸々の準備を済ませた所で私と勇人はマスクを着用し家を出た。
 
「ああ……」

 家を出た所で勇人が何かに反応する。彼の目線の先にあったのは父親所有のバイクだ。
 
「バイク?」

 父親はバイクが好きで家には2台ある。休日には1人でツーリングに出かける事もあったか。
 それに勇人は暴走族。となるとバイクには乗り慣れているか……ゾンビになってもバイクに乗れるものなのかどうかは気になるが。

(無理そうな気が……)

 すると勇人は父親のバイクにふらりと歩み寄ると、上にかかっている緑のシートを優しく外してさっさとエンジンをかけて座席に跨る。

(えっ、乗れてる!)