ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

(誰もいない……けど、油断はできない)

 いきなり飛び出て来るのだってあるかもしれない。勇人とぴったり体を寄せながらゆっくりと歩く。
 それにしても人もゾンビもいない。

(本当に誰もいない)

 住宅街から普段は交通量の多い道路に出た。車は通っていないが信号だけは規則正しく点滅している。

「!」

 前方に血だまりを見つけた。そして周囲に目を向けるとあちこちにゾンビが倒れている。もう死んでしまったゾンビだろうか。彼らには極力距離を取り、スーパーへと歩いていく。

(もう、そろそろだと思うけど……)

 ゆっくり慎重に歩いているせいか、スーパーまでの距離がいつも以上に遠く感じる。それに胸がバクバクと言っていて緊張感が半端なく私の身体を覆っている。

(見えてきた、あれだ)

 スーパーが視界に入って来た時。後ろから何かが迫る音がした。勇人もそれに気が付いたのか、すぐさま私をかばうような姿勢を見せる。

「グおおおおおおおおっ!!」

 後ろを振り向くと中年男性と思わしきゾンビが右足を引きずるようにしてこちらへと両手を伸ばしてやってきている。

「果林、オレから離れるなよ」
「う、うん」

 ゾンビが両手をスローモーションで振りかざそうとしたのを勇人は鉄パイプを一閃凪いだ。