肌の色が急速に青白くなり、そしてゆっくりと起き上がった。その起き上がる時の動きはとてもではないが人間のものではなかった。
 例えるなら、操り人形のそれだ。かくかくとした不自然な動きはまさにそうだ。
 彼の顔からは表情が一切消えた。そしてうなり声を上げながらこちらへと手を伸ばして襲い掛かって来た。私はとっさに彼の腹部に蹴りを入れた。両手には武器が無い状態で彼から距離を取らねばならないと思ったからだ。
 蹴りは見事に決まり、彼は壁まで吹っ飛んでいった。だが、ゆっくりとかくかくとしたスローモーションな動きではあるが、体勢を立て直してこちらへとやって来る。
 その間に私達は実験室にいたスタッフを引き連れて部屋を後にした。そして扉を腕で抑えて閉めている間に研究所所属の特殊部隊を呼び鎮圧してもらう事にした。

(その時の騒ぎは研究所で勤務し始めて以来、一番の事だった)

 駆けつけた特殊部隊には防護服を着用してもらった。もしもの時に備えてのものだ。
 防護服を着用した特殊部隊は部屋の中に入り、銃で彼を鎮圧した。銃で胸部を撃たれた彼が動く事は無かった。彼の死体は回収されて遺体が保存される区画へと運ばれた。

(ご家族にはなんて説明しようか)

 今後の研究を考えるとすぐに火葬は出来ない。最低でも2.3年はこのまま保存しなければならない。規則がそう決められているので仕方ない。