ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

 何時だろう。スマホは居場所が知られるのが怖くて家に置いてきている。なのでその場からもそもそと起き上がって机に置かれた目覚まし時計を取る。

「15時過ぎか……」

 お腹が空いたような感覚も若干ながらある。なので桃の缶詰をプシュッと開けて中を吸い込むようにして食べる。

「む、美味しい」

 一口サイズにカットされた桃は瑞々しくて甘い。食感も柔らかくて食べやすい。

「ごちそうさまでした」

 缶詰は洗面台で洗い、ゴミ箱の中に捨てる。テレビは水族館の映像から、いつの間にか北海道・知床の景色を伝えるものへと変わっていた。
 傾斜のきつい崖にはヒグマが1頭、崖を伝うように右から左へと歩く。そんなヒグマを見るようにして手前にピントが合わずぼやけた白い海鳥が映り込む。

(知床かあ……)

 知床は勿論行った事が無い。というか北海道自体行った事が無い。いつかは行ってみたいなとは思ったりしているが無理だろうなという気持ちの方が強かった。
 それに私の母親はインドア派で、旅行自体あまり好きでは無かったのだった。