彼の身体からは熱は感じない。それにそこまで冷たくもない。ぬるいようなぬるくないような、そんな感じだ。

「……」
「あの、えっと、多賀野くん……」
「イヤ、か?」

 思わず私の心臓が跳ね上がる。勿論、彼から抱きしめられるのは嫌では無いけど……。

「嫌じゃないけど……?」
「?」
「怖い、かな……って」

 だって相手は暴走族総長のゾンビだ。怖くない訳が無い。
 ゾンビであろうが無かろうが怖いのに変わりはない。しかもゾンビ化した事がむしろ恐怖感を倍増させている。

「大丈夫」
「え?」
「果林は、俺が、マモル……」
(今、私を守るって言った?)
「本当? 本当に……守ってくれるの?」

 そうおそるおそる彼に尋ねると、彼は大きく首を縦に振った。

(ゾンビが、多賀野くんが私を守る……守ってくれるんだ)
「ありがとう。嬉しい」

 勇人に感謝の言葉を伝えると、彼はこくりと頷いた。頷いた時、やや笑ったようにも見えた。

(ゾンビになっても優しいんだなあ)