私は勇人についてきて。と声をかける。勇人は無言でその場から立ち上がった。
 彼を案内するのは両親の寝室。寝室には大きなクローゼットもある。階段を上がって寝室に到着すると、クローゼットを開けてここでいるように勇人に告げる。さらにクローゼットの中には父親の服もあったので血だらけの状態である彼に着替えるように促した。
 勇人は素直に頷きクローゼットの中に入った。

「扉閉めるよ」

 扉を閉めた後は、警察に電話してゾンビ化した母親の遺体について連絡すると程なくして警察官が白い防護服を着た状態で自宅に訪れた。防護服の上からは銃をひもでななめがけにしている。

「こんにちは、あちらですね」

 警察官は母親の遺体を3人がかりで担ぎ、車の中へと無造作に詰め込んだ。どうやら母親の遺体はこれから解剖されるそうで、その同意書を含めた書類にサインするように言われた。
 適当にサインすると警察官の1人が書類を渡し、去っていった。

(……なんか、手慣れている感じだったなあ)

 警察官達はまるでゾンビパニックに対して備えをしてきていたような実際に体験した事があるような、そんな風に落ち着き払っていた。
 
(なんだろ、違和感が……)

 私は違和感を覚えながら、クローゼットにいる勇人を迎えに行った。クローゼットをおそるおそる開くと着替え終えた勇人がゆっくり近寄り、私を抱き締めた。