「っ……」

 扉が開かれたままの玄関。今、私のすぐ目の前にいるのは学校では「絶対に関わるな」とのお達しが出ている暴走族の総長である。

「なんで、助けてくれたの?」
「……」

 彼が何をしたのかと言うと、突如襲い掛かってきた私の母親を、右手に持っている鉄パイプで撃退したのだ。
 だが、彼も様子がおかしい。何度問いかけても無言だ。目はうつろで、顔色は白い。ちなみに玄関で倒れたまま動かない母親の肌の色はもっと青白い。

(これが、テレビで言ってたゾンビってやつ……?)

 彼はじっと、私をただ真正面から見つめている。