まことと父は表に出た。トラックがとまっていた。ばたっ。ドアが開いた。長髪の黒髪、口ひげをはやした作務衣姿の年配の男だった。背が高く、170以上はあった。裏原崋山だった。
 「やあ、麻戸君」
 「やあ、裏原君」
 崋山はまことを見た。
 「君がまこと君だね」
 「は、はい。初めまして」
 「初めまして」
 「いやあ。立派な娘さんだ」
 「え、今なんて」
 「もう立派な男じゃよ」
 「おやじ」まことは崋山に向いた。
 「あ、あのう、なんで私が女だって・・・・・・」
 「ん、まあ、見たらわかるよ。顔つきとか、肌とか、身のこなしとか」
 と、崋山。
 「え」
 崋山はにっこり笑った。
 「君のお父さんはなんでそういう育て方をしたのかねえ」
 「知りませんよ。すちゃらかおやじ、あ、いや、父のことなんて。でも、おじさまは、芯がしっかりしてますよね」
 崋山は片手を後頭部にやった。
 「い、いやあ」
 「それより、裏原君、例のものは?」
 「え」
 崋山はまことを見た。
 「あ、ああ、今」
 崋山はトラックの運転席に入って行った。しばらくして、崋山がカバーをかけられた服を持って現れた。
 「おお」
 と、泰山。
 「ほ、ほんとにこれでいいの?」
 と、崋山。
 「ん?」
 と、まこと。
 「それでいいのじゃ」
 と、泰山。
 崋山はカバーをとった。すると学ランが現れた。
 「え」
 と、まことは唖然となった。
 「おお、喜べまこと、これがお前の制服じゃ」
 と、泰山。
 「おやじ、てめえ」
 まことは泰山につきをいれた。泰山はいとも簡単に手でそれを受け止めた。
 「まあ、まあ」
 と、崋山がまことにいった。
 「ああ、そうだ」
 と、崋山。
 「え」
 まことはいって、つきをひっこめた。
 「確か、まことくんがいくハイスクールは男女の制服が自由だから、男子と女子の制服両方持っていけないとだめだったんじゃなかったけかなあ」
 と、崋山。
 「え」
 と、まこと。
 「なに。それはほんとか裏原君」
 「そ、そうだったよ確か。いけねえ、女子の制服も用意しなきゃ、ああ、まことくん、わるかったね」
 と、崋山はいってまことにウインクした。
 「え」
 と、まこと。
 「すまん麻戸君、女子の制服もそのうち持ってくるから」
 「ふーむ。そういうことならば」
 崋山はまことにウインクした。まことは笑みがこぼれた。