シェフたちの問いかけにいつもなら「一度で聞き取りなさい」と食器を投げつけるところだが、キャンディスは厳しい視線を向けて不満をアピールするにとどめた。


「か、かしこましました!」

「わかればいいのよ」

「皇女様、本当にありがとうございます……!」


ジャンヌは深々と頭を下げている。
しかしキャンディスは下心満載で己のプライドを守るために動いているだけなので何故、お礼を言われているのかはわからない。
だが、いつもこちらを睨みつけてばかりいるジャンヌが深々と頭を下げている光景は悪くない。

それにアルチュールを下僕として手元に置いておけば、ルイーズがキャンディスを排除することも理由がないため簡単ではなくジョルジュと手を組んで、キャンディスを殺すこともないはずだ。

そもそも今のキャンディスに誰か殺す予定はない。
そんな安易な考えから出た言葉だったが、この一件によって二人に感謝されることになるとも知らずにキャンディスはいつもよりもずっと楽しい食事を終えたのだった。