「裏技……って?」
「真弥には、世界中にハッカーのお仲間がいるんだ。そのネットワークを駆使して、どこの国のサーバーが使われたのかを特定するってわけだよ。な、真弥?」
「正解♪ で、お返事のあった国が当たりってわけ。……よし、ビンゴ!」
彼女のPCに来た返信メールの文面は中国語だった。
「……ってことは、中国のサーバーを使ったってこと?」
「ううん。確かにあたし、中国にもハッカー仲間がいるけど、正解はシンガポール」
「「シンガポール?」」
思わずわたしと内田さんの声がハモった。
「そ。あの国は多国籍だし、中国からの移民も多いから。ネット関係はけっこう緩いんだよ。メールをくれたあたしのお仲間は、中国から移住してる人。――あー、やっぱりね。このアカが作られたのと同じ時期に、ある日本人男性がアクセスした履歴を見つけたって」
「誰ですか、それって」
「俳優の、小坂リョウジ。つーまーり、このアカは小坂リョウジの裏アカ確定ってこと」
「やっぱり……そうなんだ」
調査結果はほぼわたしの予想どおりだったけれど、確定したことで小坂さんの狂気を見た気がしたわたしには悪寒が走った。
「このデータはプリントアウトして、篠沢さんにお渡しします。これをこの後どう使われるかはあなたにお任せしますね。――で、調査料金についてなんですが」
応接スペースに真弥さんが戻ってきたところで(といってもパソコンデスクはすぐ横にあったのだけれど)、内田さんからそう切り出された。
「ウチの事務所では他の調査会社と違って、ウチでの調査結果を依頼人に言い値で買い取ってもらうシステムになってるんですが……。最低ラインで二十万円になりますけど」
「わたしの言い値でいいんですね? じゃあ五十万円で」
「五十万……、いいんですか? けっこうな大金ですよ?」
「いいんです。これで大切な彼を守れるなら安いものですから。一応、百万円までは出せるように銀行で下ろしてきました」
わたしは通学バッグから現金の入った封筒を取り出すと、そこから半分を引いてローテーブルの上に置いた。
「――五十万円、確かに受け取りました」
貴女は銀行員さんですかと訊きたくなるほど見事な手さばきで現金を数えた真弥さんが、その場で領収書を記入して手渡してくれた。収入印紙がすでに貼られているあたり、そこはキッチリしている。
「これで我々の調査は終了となりますが、また何かあればご一報下さい。この件は事が事なんで。……一応、オレたちももらった五十万円分は仕事しないといけないし」
「分かりました。じゃあ、わたしからお願いというか、お二人に協力してもらいたいことがあるんですけど」
「「協力?」」
「ええ。小坂さんを罠にかけようと思って」
わたしは彼をギャフンと言わせる計画について、お二人に話した。
「……なるほど。こちらとしても、ぜひとも協力させて頂きたいですけど。その前に一つ、質問いいですか?」
「ええ、どうぞ」
「この計画で絢乃さんが本当に守りたいのは彼ですか? それともご自身ですか?」
「真弥! お前、何ちゅう質問を――」
「大丈夫ですよ、内田さん。わたし、こういう質問にはもう慣れてますから」
真弥さんはきっと、わたしに本気の覚悟を問いかけているんだ。それなら、わたしもこの問いと真剣に向き合わなければ。
「わたしが守りたいのは彼。わたし自身はどんな目に遭っても構わない」
「…………分かりました。そういうことなら協力させてもらいます。ウッチーもそれでいいよね?」
「ああ」
――こうして、わたしたち三人は貢に内緒の反撃作戦を開始したのだった。
「真弥には、世界中にハッカーのお仲間がいるんだ。そのネットワークを駆使して、どこの国のサーバーが使われたのかを特定するってわけだよ。な、真弥?」
「正解♪ で、お返事のあった国が当たりってわけ。……よし、ビンゴ!」
彼女のPCに来た返信メールの文面は中国語だった。
「……ってことは、中国のサーバーを使ったってこと?」
「ううん。確かにあたし、中国にもハッカー仲間がいるけど、正解はシンガポール」
「「シンガポール?」」
思わずわたしと内田さんの声がハモった。
「そ。あの国は多国籍だし、中国からの移民も多いから。ネット関係はけっこう緩いんだよ。メールをくれたあたしのお仲間は、中国から移住してる人。――あー、やっぱりね。このアカが作られたのと同じ時期に、ある日本人男性がアクセスした履歴を見つけたって」
「誰ですか、それって」
「俳優の、小坂リョウジ。つーまーり、このアカは小坂リョウジの裏アカ確定ってこと」
「やっぱり……そうなんだ」
調査結果はほぼわたしの予想どおりだったけれど、確定したことで小坂さんの狂気を見た気がしたわたしには悪寒が走った。
「このデータはプリントアウトして、篠沢さんにお渡しします。これをこの後どう使われるかはあなたにお任せしますね。――で、調査料金についてなんですが」
応接スペースに真弥さんが戻ってきたところで(といってもパソコンデスクはすぐ横にあったのだけれど)、内田さんからそう切り出された。
「ウチの事務所では他の調査会社と違って、ウチでの調査結果を依頼人に言い値で買い取ってもらうシステムになってるんですが……。最低ラインで二十万円になりますけど」
「わたしの言い値でいいんですね? じゃあ五十万円で」
「五十万……、いいんですか? けっこうな大金ですよ?」
「いいんです。これで大切な彼を守れるなら安いものですから。一応、百万円までは出せるように銀行で下ろしてきました」
わたしは通学バッグから現金の入った封筒を取り出すと、そこから半分を引いてローテーブルの上に置いた。
「――五十万円、確かに受け取りました」
貴女は銀行員さんですかと訊きたくなるほど見事な手さばきで現金を数えた真弥さんが、その場で領収書を記入して手渡してくれた。収入印紙がすでに貼られているあたり、そこはキッチリしている。
「これで我々の調査は終了となりますが、また何かあればご一報下さい。この件は事が事なんで。……一応、オレたちももらった五十万円分は仕事しないといけないし」
「分かりました。じゃあ、わたしからお願いというか、お二人に協力してもらいたいことがあるんですけど」
「「協力?」」
「ええ。小坂さんを罠にかけようと思って」
わたしは彼をギャフンと言わせる計画について、お二人に話した。
「……なるほど。こちらとしても、ぜひとも協力させて頂きたいですけど。その前に一つ、質問いいですか?」
「ええ、どうぞ」
「この計画で絢乃さんが本当に守りたいのは彼ですか? それともご自身ですか?」
「真弥! お前、何ちゅう質問を――」
「大丈夫ですよ、内田さん。わたし、こういう質問にはもう慣れてますから」
真弥さんはきっと、わたしに本気の覚悟を問いかけているんだ。それなら、わたしもこの問いと真剣に向き合わなければ。
「わたしが守りたいのは彼。わたし自身はどんな目に遭っても構わない」
「…………分かりました。そういうことなら協力させてもらいます。ウッチーもそれでいいよね?」
「ああ」
――こうして、わたしたち三人は貢に内緒の反撃作戦を開始したのだった。



