夫婦ノートに花束を

※※

「お。このコーヒーすっごくおいしい」

「でしょ。スタパの期間限定」

 私達は帰り道に近所のスーパーで買ったケーキを頬張りながら、コーヒータイムを楽しんでいた。見慣れたダイニングテーブルの上には薔薇の良い香りが充満している。

「晴菜、結婚記念日なのに本当にイタリアンじゃなくてよかったの?」

「うん。陽太と家でこうやってコーヒータイムできる方が嬉しい」

「そっか」

 気取らなくてもお洒落じゃなくても全然いい。ひとりぼっちより二人の方が日々が何百倍も幸せで、一緒に居られることがただただ愛おしい。

「あ、あとでさ。俺に洗濯物の畳み方教えてくれる?」

「え? どうしたの急に」

「俺、洗濯と食器洗いは上手くできる自信ないけど、畳むのならいけるかなって」

「じゃああとで一緒にやろ」

「おう」

 これからの私達にもう『夫婦ノート』は必要ない。けれど今日だけはこの幸せに満ちた、忘れたくない想いをあとでこっそり綴っておこう。

「陽太、大好き」

「俺も晴菜が……好きだよ」

 初めて聞いた陽太の好きという言葉に胸がいっぱいになる。私たちはお互いに気恥ずかしくて暫く笑い合ったあと、そっと唇を重ねた。

──これからもずっと夫婦一緒にいられますように







2023.12.22 遊野煌