キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


「髪も拭いて。優しくな」

「は、はい……」


黒い髪に、そっと触れる。

思ったより柔らかい。猫っ毛なのかな。


「いいなぁ、ふわふわの髪」

「未夢は違うのか?」


あ、しまった。声に出ちゃってた。

和やかな雰囲気だったから、気が抜けちゃった。


「私は……直毛なんです。だから昔から、柔らかい髪に憧れていました」

「キレイな髪だけどな。薄茶色で長くて、思わず……」


言いながら、凌生くんは私の髪を一束とって唇を寄せる。

え、まさか凌生くん、髪にキスしようとしてる?


グイッ


「そ、それでですね。私って髪がかたすぎて、手に刺さったこともあるんですよっ」

「……おい」


いてもたってもいられなくて、自分の髪を思い切り引っ張る。

すると凌生くんが掴んでいた髪も、私の元へ勢いよく戻って来た。


もちろん、凌生くん不満そうで。

すごい怖い顔して私を睨んでる……っ。


「髪にキスされんのも恥ずかしいの?」

「え、だ、だって……」