キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


その時。ふと昨日の凌生くんの言葉を思い出した。


――お前は人質で、道具だ


「あ……、そうか」


私は道具だから。

凌生くんが道具に感情を抱くなんて、そんなことあるはずないもん。

何の感情もなく、ただの「物」として抱くことが出来るんだろうな。

戸惑っているのは、私だけなんだ。


「覚悟、決めないとな……」


ぎゅっと目を瞑った時、貯めていた涙がこぼれた。

あ、いけない。

凌生くんの服が濡れちゃう。


「泣かない、我慢……」


涙とまれ、とまれ――と思いながら目を瞑る。

すると夜にあまり寝られなかったからか、凌生くんに続いて私も眠ってしまった。


「すー」

「……」


無防備に寝る私を、目を開けた凌生くんが静かに見つめる。

そして涙で濡れた私の頬を指で撫でながら、


「やっと寝たか」と。


安心したようにため息をついた。



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