すると凌生くんは、そんな私の視線に気づいたのか。
小さな子供をあやすように、私を頭を撫でてくる。
「はいはい悪かったって。機嫌直して早く入れば?」
「でも……」
「あ、後ろにイレイズ」
「!」
イレイズ――の言葉が聞こえた瞬間、急いで中に入りドアを閉めた。
さらにドアの近くいるのは怖いから、走って凌生くんの背中に回る。
だって、だって怖いんだもん……っ!
「本当に子どもみたいだな未夢」
「も、もう子供じゃありません」
「ふっ、そうだけどな」
すると凌生くんは背中にいる私の腕を引っ張って、自分の前に持ってくる。
私の体を軽々と移動させてしまうあたり、凌生くんってすごく力持ちなんだろうなぁ。
「イレイズなんていない。あれは嘘」
「だ、だましたんですか……?」
「だって未夢が面白いから」
しれっと。
全く悪ぶらずに言われて、こっちの毒牙が抜かれる。
無邪気な子供を前に、怒る気が失せるって感情と似てる。



