キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「言ったろ。引っ越しするって」


言ったけど……。

確かに言ったけど……っ。

これから私、凌生くんの部屋で過ごすの?


「凌生くんの部屋を貸していただくわけにはいきません! 凌生くんを追い出すなんて……」

「なんで俺が出て行かないといけないんだよ」

「え、だって……」


私が凌生くんの部屋をかりるんだよね?

それで凌生くんは他の部屋に行くんだよね?

え……違うの?


「ここは今から、俺と未夢の部屋」

「……え、えぇ!?」

「お前、俺の部屋を乗っ取ろうとしてたのか。厚かましいヤツだな」

「そういうわけではっ」


両手をブンブン振ると、凌生くんは「ふはっ」と吹き出した。


「冗談だっての。未夢がそんなん思ってないことくらい分かる。いちいち本気にするな」

「か、からかってたんですか……」


速くなった心臓を必死になだめ、深呼吸をした。

時々、恨めしそうに凌生くんを見ながら……。