「ど、どうして引っ越しなんて、」

「は? じゃあドアのない部屋にずっといたかったのかよ」

「そ、そういうわけじゃ、ないんですけど」


でも、これから連れて行かれる先が想像できなくて、少しだけ怖い。

人質って言うからには……牢屋とかもあるのかな。



と思っていたけど。

凌生くんが「ここだ」と立ち止まったのは、とある部屋。

ドアからして豪華そうな部屋だけど……ここは?


「俺の部屋」

「……へ? りょ、凌生くんの部屋⁉」


あ、寄り道って事かな。

凌生くんが部屋に忘れ物をしたから立ち寄ったんだね、きっと。


と思っていると「入れ」と凌生くんがドアを開ける。


「え、私がこの中に?」