「たまたまだよ」

「……」


梗一くんから、スッと笑みが消える。

だけど袖から手を抜いたところを見れば、ナイフを出す気はないらしい。


「幼なじみのよしみとして、そういう事にしといてあげますよ。今はね」

「……たかが幼なじみに、そんなに警戒する人はいないと思うけど」

「〝たかが〟で済めばナイフはいらないんですよ」

「……はぁ」


バチバチした空気の中、二人は並んで雷斗くんの後を追う。


これから幹部三人が目指すのは、


――幹部は下に集合らしいです


私が不気味だと思った、地下へ続く階段。


明りが届かない真っ暗な階段を、三人は音もなく降りていく。

そして一つの部屋のたどり着き、ドアを開けた。


そこには――


「来たか」


既に到着していた凌生くんが三人を出迎える。

全員が部屋に入り扉を閉めると、階段は再び闇へと化した。



治外法権・B地区の地下――



真っ暗な先に何があるのか。

深淵の正体を知るのは、幹部四人のみ。



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