キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「……逃げるつもりはないので大丈夫です」


中まで――という恐ろしい単語を聞いて、そそくさとトイレに入る。

そんな私の様子を、わずかに口角を上げた梗一くんが見ていた。





――そしてお手洗いが終わり、部屋に戻る最中。


私は、不思議な階段を見つけた。

不思議というか、不気味というか。

廊下の灯りが届く三段目まではかろうじて見えるけど、そこから下は全く見えない。暗闇だ。


「下には何が……?」

「知りたいですか?」


ポツリと呟いた言葉を、梗一くんに聞かれていた。

高速で頭を横に振り、視線を前で固定する。

すると梗一くんが「よろしい」と笑いながら、私の頭に手を置いた。


ポンッ


「このB地区において、好奇心は身を亡ぼします。生かすも殺すも自分次第ですよ」

「……はい」


ということは、私が変な行動をしない限りは、このB地区で人質として生かしてもらえるということ。

それって、なんだか……。

ここにいていいって言われたみたいで、少しだけ嬉しい。