キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ



ここは本当にアパートみたいで、廊下を進んでいると、いくつもの扉が壁についている。

どの部屋も一緒なのかな。

私がいる部屋みたいに、ベッドしかないシンプルな部屋だったりするの?

するとキョロキョロする私に気付いた梗一くんが「こら」と私の頭をコツンと小突く。


「物見遊山きどりですか? 自分が人質ってこと忘れないでくださいよ。もし勝手に探検しようものなら首が飛びますからね」

「お、大人しくしてます……っ」


脅しなんだろうけど、梗一くんの言葉は妙に迫力があるから怖い……。

さっきのナイフを再び目にすることがないよう、視線を前に固定して歩く。

すると、突き当りにきたところで「ここです」と梗一くんの足が止まった。


「では一人で行ってきてください」

「ありがとうござ、」

「窓も換気扇もついてないトイレなので、逃げようたって無駄ですよ。変な行動したら中まで同行するので、そのつもりで」