キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


「雷斗くん、どうかしましたか?」

「……ううん。なんでもないよ」


眉を下げて笑みを浮かべた雷斗くん。

なんだか悲しそう……?


不安に思って「雷斗くん」とソッと手を伸ばすも、上手い具合にかわされた。

かと思えば、太陽のような笑みをニコッと浮かべる。


「未夢ちゃん、高さのある靴だからコケないように気を付けてね? あと、溝にはまらないこと!」

「はいッ。いってきます!」


大きく手を振って走る私。

その後ろで〝雷斗くんの背中を優しく叩く梗一くんと怜くんの姿〟を、オリさんだけが見ていた。


「――ねぇ、未夢様」


夕日を受けながら走る私を見て、オリさんは泣きそうな顔で笑った。


「私の要求に、全て応えてくれてありがとう」



――あなたの手で監獄を甘園へ変えてください

――あのお方を助けてほしい



「主は笑顔を取り戻したし、B地区は生まれ変わりました。冷たい監獄から、甘い甘い園へと――皆の笑い声が響いてるのが何よりの証です」

「ん? オリさん、何か言いましたか?」


オリさんの声か風の音か分からなくて、後ろを振り向く。

すると私の後ろにいたはずのオリさんは、ビュンと私を抜かして前を走った。