キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「ふーん。凌生には散々〝独占欲の塊〟とか言ったくせに」

「それは怜でしょ」

「……」


図星だったのか、黙る怜くん。

だけど「仕方ないですよ」と、梗一くんが穏やかに笑った。


「悔しいのは皆おなじ。今は精一杯、二人の門出を祝おうじゃありませんか」

「うん、だね。ヒドイこと言った償いとして、今までで一番可愛く仕上げたから! 凌生が喜ぶこと間違いなし!」

「……携帯を買いに行くだけだけど?」


怜くんが呆れたと同時に、カツッという高いヒール音が響く。

皆が顔を上げると、頬を紅潮させて笑う私の姿。


「あの、雷斗くんっ」

「どうしたのー?」

「凌生くんが毒で寝込んだ夜。一緒に起きてくれて、ありがとうございました」

「え」


あのあと凌生くんから「雷斗くんは昼夜逆転してない」って聞いて分かったの。

あの時、雷斗くんは凌生くんを心配して、私を気遣って一緒に起きててくれたんだって。


「雷斗くんが一緒で、とても心強かったです!

それに今日も! こんな私を素敵にしてくださり、ありがとうございます。今とっても幸せです!」

「!」


そこへ、オリさんがちょうど通りかかった。

キョロキョロと辺りを見回している。


「凌生様を知りませんか?」

「あ、これから私も追いかけるんです。一緒に行きましょう、オリさんっ」

「え、わっ」


オリさんの手を引いて、B地区を後にしようとした。

その時――ツンと服が引っ張られる感覚。

振り向くと、雷斗くんが「あのさ」と私を見つめていた。