「……っ」
思わず暗い表情になった私を一瞥した後、お兄さまは続けた。
「父が未夢を毛嫌いしているのは明白だったし、何より扱いが乱暴だった。
俺はいつか未夢がいなくなってしまいそうで……それが嫌で、怖かったんだ」
「怖い……?」
「たった一人の妹ができたのに奪われる可能性があるっていうのは……幼い俺でも怖かった。
だから奪われる前に、未夢を総季家から逃がしてやろうと思ったんだ」
だけど――と声を潜めたお兄さまに、私を抱く凌生の手に力がこもる。
「父の代に変わり総季家の財産は枯渇していった。父が好き勝手に遊んだ罰だ。
しかし一度得た贅沢は、そう簡単に手放せるものではない。金が足りないと思った父は、ついに未夢に目をつけた。
父が未夢をお金に変えようとしていると見抜いた俺は、急いで対策を考えた。未夢を危険に晒さない対策を」
その時。
お兄さまは地面に転がっているイレイズを見る。



