いつものキツイ口調で怒られているのに、なぜだか私は安心から泣いてしまう。
私がさっき転がっていたところに、ナイフが刺さっている。
お兄さまが、助けてくれたんだ。
「花瓶を割ってくれて助かった。あの音がなかったら気づけなかったぞ」
「お兄さま、私……っ」
「うるさいから泣くな」
「う……っ」
こんな状況なのにピシャリと言われてしまって。
長年の条件反射で、私も大人しく口を閉じてしまう。
するとお兄さまは私を床に降ろし、手と足が縛られていた縄を素早く解いた。
「俺がひきつけてる間にココから出ろ。逃げ足は速いだろ?」
「で、でも……」
家出をした事を言われ、チクりと胸が痛む。
こんな時まで嫌味を言うなんて、さすがお兄さま。
だけど、ダメだよ。
「出る時は……お兄さまも一緒です」
「は?」
「私一人では……絶対に出ませんっ」
「……」
私は今の今まで、お兄さまのことを勘違いしていた。
お兄さまは口では悪いことを言うけれど、見えないところで全力で私を守ってくれる不器用な優しさを持っている人なんだって。
やっと今、お兄さまを知ることが出来た。



