キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


「……え」


怒らないの……?

私の代わりにお兄さまが水に濡れてしまったのに「お前のせいだ」って、私を怒らないの?


すると退室しかけたお兄さまが、ピタリと歩みを止める。

その目はお父さまを見ていて……だけど、何を言うでもなく。

むしろ何事もなかったかのように、完全にいなくなってしまった。


後に残るのは、お兄さまの髪から垂れ落ちた雫たち。


「――興ざめだ」


結局、お父さまはスープを飲んだだけで席を立ってしまった。

その後はめっきり帰ってこなくて……結局、私も食事が喉を通らず退席した。


暗い食事になっちゃった……。

私が食事でスープを零したのが気に入らなかったのかな。

お父さまを怒らせちゃったのかな。


「お父さま……」


急に私と会話をしたり、急に食事を一緒にしたり。

今日のお父さまは、今までのイメージとかけ離れている……。

それに水のことが気になる。


「私にかけようとした……よね」


お兄さまが被っちゃったけど、もしもお兄さまがいなければ水は私を直撃していた。

きっとビシャビシャに濡れていただろうな。