お兄さまと顔を合わせた後、お屋敷に入った。


使用人さんは私のことを「おかえりなさい」とは言うけれど、内心はどう思っているか分からない。

問題を起こす火種が帰って来たと思ってるかもしれないし、一切歓迎されていないかもしれない。


……でも、いいんだ。

だって私は、もう逃げないって決めたから。


「……すぅ、はぁ」


私は今、お父さまの書斎部屋の前にいる。

先ほどお兄さまに「お父様とお母様にきちんと挨拶するように」と言われたから挨拶を……と思ったけど。

どうやらお母さまはお出かけらしく、たまたま家にいたお父さまにご挨拶しにきている。


コンコン


「み、未夢です」

「入れ」

「失礼します」


ガチャ、と扉を開けると、いつもと変わらないお父さまの姿。

どこかきつく見えるメガネ姿に、オールバックの髪。

更には、スーツの柄もどこか派手で……〝お父さん〟というには近寄りがたいオーラだ。