「それから俺たちは未夢に会わなくなった。助けると、余計に未夢がひどい目にあうから。
でもさ、結局その繰り返しだよね?
逆らったら覇鐘が未夢に何するか分からない――そう思ってる春宮は、覇鐘の忠犬になるしかない。返事は〝はい〟か〝イエス〟だけ。それ以外の言葉は、全て未夢への凶器へと変わるから。
だから言ったでしょ、春宮」
「……」
ジロリと睨む俺を、一瞥する冬城。
その目は、珍しく俺を睨み返している。
「総季家は内側から変わらないといけないんだ。未夢の件で分かったはずだよ。いくら春宮が忠犬になったところで、未夢を守り切ることは出来ない。それなら、未夢が自分で総季家を変えていかないと」
「……俺が過保護だって言いたいのか」
「懐きすぎって言ってんの。忠犬なら犬らしく、兄か妹、どちらか一人にシッポ振りなよ」
「――!」
ギシッと音がした数秒後には、俺は冬城に迫っていた。
そして拳をふり上げた時。
「はい、ストップ」
パシッと。
いつの間に割り込んだか、夏屋と冬城が俺の拳を止めていた。



