キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


「さすがの春宮も、自分の命惜しさにお前を差し出したか。所詮はガキだな――お前も可哀想に。飽きられて捨てられたのか。つかの間の夢はどうだった? 現実に帰って来てどんな気分だ」

「……」

「これに懲りたら、もう二度と逃げるなんて真似はするな。命が惜しければ総季に従え」

「……お兄さま」

「!」


いつも「はい」と言って引き下がる私が口をきいたものだから、お兄さまは驚いた顔をした。


……こうしてお兄様の表情をジックリ見るのも、久しぶりだ。

だって私はいつも目を合わせないように俯いていたから。

だけど――


「今までお兄さまの言う通りにしてくるのが正解だと、そう思っていました」

「……違うとでも?」

「少なくとも、私にとっては正解ではありません。だって、それは……私の願った事ではないから」

「自分の願う事が、人生においての正解か。随分と偉くなったな」

「下を見るばかりの人生よりも、前を向く人生の方が素晴らしいと気づいたんです。

それを教えてくれたのは……春宮凌生くんです。その方を傷つけるのは、いくらお兄さまとて許せません」

「……」