キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


「……あんたに見せたかったのはコレ。その平和ボケした脳、少しは起きた?」

「……っ」


ヒソヒソ声で喋る怜くん。

私は怜くんの太ももから降り「お願いがあります」と、その手を握った。


「私……やっと覚悟ができました」

「は? なんの?」

「お兄さまに逆らう覚悟です」

「!」


言うと、怜くんは目を見開いて驚いた。

だけど……私は本気だよ、怜くん。


「お兄さまはこの部屋を使う時、必ず鍵をかけるんです。きっと今もでしょう。

だから――私に肩車をしてくれませんか?」

「は?」

「この窓を割って中へ入ります」

「はあ⁉」


怜くんが大きな声を出した途端、中にいる二人の瞳がこちらを向く。


「ネズミがいるな。見てこい」

「……はい」


私は乗り込む気満々だったけど、怜くんは違うみたい。

「こっち!」と、私の腕を強く引いた。


「いや、離してください!」

「いいから早く!」


そして待たせていたタクシーに素早く乗り込み、総季家を後にする。

……いや、しようとした。

だけどタクシーに乗る直前、私は怜くんの手を振りほどく。