キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


私は総季未夢の名前をつけた人間。

みんなにとって私は、それくらいの認識。

総季の名前ばかりに目が行って、本当の私を見ることは全くと言っていいほどない。


「……はぁ」

「未夢!」

「わぁっ」


泣きそうになりながらため息を吐いた時。

後ろから、背中をポンと叩かれる。

こんな事をしてくれるのは、麻琴ちゃん。


「なに辛気臭いオーラ出してんの~? 制服からカバンから、ぜーんぶ新品になったら普通テンション上がらない?」

「そ、そうだよね……あはは」

「……」

「麻琴ちゃん?」


むりやり笑っていると、麻琴ちゃんが「ん~?」と言いながら私に近づく。


「未夢、なんかクマできてない? それに目が赤い! 何かあった?」

「麻琴ちゃん……」


吹きすさんでいた心が、春の温かさを取り戻したようにポカポカしてくる。

いつだって麻琴ちゃんは、私そのものをいてくれてるんだって思ったら……。

さっきまでの悲しい気持ちは、どこかへ行ってしまった。