「春宮、今日の用事を何か言ってた?」
「仕事で、夕方から一軒訪問すると言ってました」
「……やっぱり」
ん? やっぱり?
だけど怜くんは詳しく話してくれる気はないらしい。
私に「今日の帰りは寄る所があるから」と話を変えた。
「あんたにも来てもらうから、そのつもりで」
「? わかりました」
お買物かな?
怜くんとあまり話せてないから、これを機にたくさんお話しできたらいいな。
「それじゃ」
「はいっ」
黒い車が、音もなく走っていく。
その光景は、登下校するみんなの目に簡単に止まった。
だけど「さすが総季家だ」とか「さすがお嬢様」とか。
その一言で、私の置かれている状況は片付けられてしまう。
「私が総季のお屋敷を家出してるって……みんな知らないんだろうな」
ついでに言うと、フロンティアっていう暴走族の人質になってることも。
「お屋敷から離れてるから感覚が鈍くなってるけど……私のことを知ろうとする人は、どこにもいないんだった」



